バイヤーが惚れ込んだブランドを徹底取材! BRAND feature 第1回「THE SHINZONE」 ベイカーパンツが売れ続けている理由
今回からスタートする、バイヤーが惚れこんでいる人気ブランドとクオリティの高いアイテムを徹底的に取材する、「BRAND feature」。
第1回は、誕生してから現在まで、累計数万本を売り上げている大人気『ベイカーパンツ』の生みの親“THE SHINZONE”のクリエイティブ ディレクター染谷真太郎さんにインタビュー。
そのこだわり、服作りへの情熱を語っていただきました!
伝説の『ベイカーパンツ』が売れ続けている理由
もともとのルーツは古着。正式名称は『ファティークパンツ』といって、いわゆるコンバットパンツなんです。たまたまそのパンツをパン屋の職人さんが履いていたので、別名で『ベイカーパンツ』と言われています。
2001年から数万本売れ続けているベイカーパンツ。
このパンツが好きで、古着を買い付けていたのですが、なかなかよいコンディションのものが少なく、だったら自分で作ってしまおう、というのが誕生のきっかけです。
ただ、ミリタリーものをハードに作ってしまうと、女性が手に取りにくいので、生地自体を硬すぎず、柔らかすぎないように仕上げました。バックサテンを裏表逆に使用して、履いていただくとわかるのですが、すごく馴染みがいいんです。
ミリタリーをベースに女性らしさにこだわったシルエット。
色出しもすべてオリジナルです。例えば、この定番のオリーブ(カーキ)も淡すぎず、濃すぎないちょうどよい塩梅を狙いました。この他定番でネイビー、そこにシーズンの新色が加わります。今秋冬はブラウン、次の春はアイボリーです。
色も生地もすべてオリジナル。定番色に加えシーズンごとに新色をリリース。
また、前身頃のワタリ(もも部分)もしっかりサイズ感があり、ウエストもホールドされ、すっとテーパードで落ちるよう、メリハリのある女性らしいシルエットにこだわっています。
スタイルよく見えるのに、ストレスがない適度なゆるさも人気の理由。
古着のパンツだと、もっとストレートなので、女性が着るとウエストが余ってしまうんです。なのでそこは補正し着やすく、でもポケットを大きめにするなど、メンズのディテールを上手に取り入れかっこよさと女性らしさのMIXする工夫も。せっかく男性のディレクターなのだから、メンズっぽさをうまく取り入れていくのが特徴ですね。
ベイカーパンツを見る
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“THE SHINZONE”の一番のこだわりとは?
デニムに似合う上品カジュアルからスタートしているので、どこか女性らしさを盛り込んだデザインというのがテーマです。
以前はアイテム数を増やすことを考えていましたが、今はひとつのものをじっくり時間をかけて作り、ロングセラーにしていきたい。ですので、レディスにしては品番数が少なく、定番ものが多いのがウチの特徴です。長くお願している縫製工場も同じものを作り続けてもらうと、クオリティがどんどんあがっていきます。作ってくれている人たちにも喜んでもらえる、息の長いものをデザインしていくのも使命だと思っています。
そして、お客さまにとっても、サイズ感が合う定番のパンツやTシャツなど、いつでも買い換えられるよう、必需品のようになるべく切らさず常にお店に用意しているのが僕らのスタンスです。
シンゾーンの基本はデニム。誰が履いてもきれいに見えるとブランドスタートからファンが多い。
ロングセラーデニムが他と違う理由
ひとつのデニムを作るときの熱量は尋常でないんです(笑)。
先程もお話しましたが、なるべくロングセラーでやりたいので、サンプルをたくさん作り、たとえ費用がかかっても納得いくまでこだわります。そうすることで息の長い商品が生まれ、結果それを制作する工場ともいい関係が築けます。
ウチを代表する、ベイカーパンツにも似ているシルエットの『アイビージーンズ』という定番のデニムがありますが、こちらもロングセラー。アメリカ東海岸の清潔感のあるカジュアルをテーマに作ったデニムで、ウォッシュをかけず、そのまま縫い上げました。なので色落ちしないよう、お客様にドライクリーニングをおすすめし、発売当初物議を醸したんです(笑)。
こんな面倒くさいものを!という声もありましたが、きれいにデニムを履きたいという声がすごく多くて、今では洗わないジーパンとして定着しています。ただ、パンツのシルエットも時代によって少しずつ変わりますので、それに合わせてマイナーチェンジしています。丈感、ヨークの角度、ポケットのサイズ感など、とことんきれいに見えるよう工夫しています。お客さまから、うちのパンツはお尻がきれいに見えると言われますが、ヒップの見え方は特ににこだわりがあり、ポケットのサイズ、位置、ステッチのかけ方を工夫して、視覚的にヒップが小さくきれいに見える効果を狙っています。
ポケットのサイズに付け方、ヨークのステッチの方向にこだわり、視覚的に美尻に見えるデザイン。
アイビージーンズを見る
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デニムの中でも、ホワイトデニムもロングセラーです。真っ白ではなく、オリジナルの白とベージュの糸をMIXして織る”透けない白”がこだわりです。縫い糸の色にもこだわり、部分で糸の色も変えています。すべては女性がきれいに見えることを考えてのデザインです。
オリジナルの2色の糸で透けない白を生み出したロングセラーのホワイトデニム。
部分部分のステッチの色を変えることで、履く人がきれいに見えるデザインを追及。
もう一つ、人気のデニムがヴィンテージライクな”ジェネラルジーンズ”です。こちらは誰が履いてもかっこよく、きれいに見えるシルエットを目指しました。生地は肉厚ですが、他にはない特別な織りで、ムラ感の違う2種類の糸を使い、シボ感を少なくすることで肉厚で落ち感もあるのに、こなれたなじみ感を出しています。裾のダメージは一本一本手作業で、生地を削っています。
ウエスト位置はハイでもロウでもないジャストウエストで、腰や太もも周りには、ゆったりしながらもきれいに見えるバランスで、裾に向かってテーパードシルエットです。フラットでもヒール靴でもコーディネートが決まる丈感も人気です。
誰もが似合う、かっこよくてこなれ感のあるヴィンテージライクを追求。
ジェネラルジーンズを見る
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10年間変わらず大人気、定番Tシャツの魅力とは?
10年間売れ続けているロングセラーTシャツ。
50年代の古着のTシャツをイメージして作り、白、黒、ネイビーの3色展開になっています。当時のアメリカの紡績技術って未熟で、素材に適度なムラ感が逆に味になっています。これを品質のよい超長綿のコットンで作ると、きれいになりすぎる。だからウチでは紡績する際に落ちた糸で再度紡績しなおし、風合いを出しています。脇に縫い目がない筒状も特徴で、着心地もよく、何万枚も売っています。ネックラインも当時のヴィンテージの付け方を参考にし、インにもアウトしてもきれいな丈感にこだわっています。
オリジナルの糸と製法で作られている、きれいすぎない味のあるコットンが人気の理由。
Tシャツを見る
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デニムやパンツに合うトップスもロングセラー
ロングセラーのデニムにベイカーパンツ、Tシャツにカットソーにカーディガン。
デニムに合わせるトップスはどこか女性らしさを感じるデザインにこだわっています。ベースになっている軍モノのディテールをいかに女性らしくアレンジするかがポイントです。例えば、このミリタリーリブを使ったカーディガンは、袖をししゃものようにふんわりさせています。ただし普通のボタンを付けると、古着っぽくなりすぎるので、モダンにするなど工夫しています。素材も古着ぽくリプロダクトしたり、リブの長さや幅を変えるなど、細かいディテールにも手を抜きません。
メンズライクなミリタリーリブと可愛いししゃも袖の絶妙なバランスが魅力のカーディガン。
コーディネートを選ばないモダンなボタンもトレードマーク。
カーディガンを見る
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こちらのカットソーもロングセラーで、メッシュで軍モノのサーマル(下着)からヒントを得て生まれた商品で、その名のごとく肌着のような編み方で着心地が柔らかいんです。
ベーシックな色はすべてオリジナル。微妙な色だしにこだわっている。
身幅がたっぷりしていて、サイズ的にはトリプルXぐらいがイメージ。袖のリブ部分も長くて、縫い方もスエットに多い三本針でしっかり丈夫に仕上げています。スラブ糸という太さがまばらな糸を使うことで、表情のあるムラ感を演出しています。
身幅がたっぷりあるのに、着るとこなれ感がでる絶妙なシルエットが人気。
サーマルメッシュの肌着のような気持ちいい着心地にファンが多い。
カットソーを見る
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そして、ロングセラーの定番アイテムに加えて、シーズンごとの新作アイテムもメンズライクなベース+女性がきれいに見えるデザインがこだわっています。今季ですとチェスターコート。稀少な英国羊毛をつかったメンズライクなハウンドトゥース柄ですが、糸にボルドーとブルーを織り込み、どこか女性らしい華やかな表情になっています。小さめな襟に、裾に向かって三角形に広がるテントラインも着ると、エレガントなシルエットを作ります。ベーシックなデニムスタイルにさらりと羽織るだけで旬な空気を纏うデザインです。着ていただいた方には、思ったよりびっくりするくらい軽くて暖か!と言われます。
コートを見る
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今、ちょうど次の春夏コレクションの展示会中ですが、ベイカーパンツの新色はオリジナルベージュです。他にはない色にこだわりましたので、春夏の新作と合わせて楽しみしていてください。(染谷さん談)
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撮影/吉岡真理 文/土橋育子 構成/内山しのぶ