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美しいフラットシューズ
アルゼンチンのマルティニアーノ

20代の頃は、7センチや8センチのヒールを愛用していました。

私の身長は172センチですから、履けば180センチ。ただでさえ「でかいね」「迫力あるね」と言われていたのに、それを誇るかのように意気揚々と歩いていました。

だけど、そんなに気負わなくてもよかったのに。

 

背が高いことは今でも割と気に入っているけど、殊更に主張しようとは思いません。家族が暮らしているオーストラリアに戻れば、ごく平均的なサイズだし。

 

ハイヒールって、祝祭であり武装でもあると思う。それが必要なときはある。

 

でも子供を産んでから、日常生活ではフラットシューズしか履かなくなりました。ベビーカーを押したり子供を抱いたりするときに動きやすい方がいいから。

手を離した子供を追いかけるのも、とっさに助け起すのも、パンプスでは不安だったから。

 

もう一つの理由は、震災です。

いつどこで、徒歩で帰宅しなくてはならなくなるかもしれない。何十時間かけても、子供を迎えにいかなくてはならない。そんなときにハイヒールだったら、すぐに歩けなくなってしまう。余震もあるし、落下物もある中を、どうやって安全に歩き切るか。

以前、当時の舛添都知事と仕事をしたときに、真剣に「震災対策にスニーカーの備蓄を」と伝えました。絶対、必要になるから。

 

まあそんなわけで、私生活では一年中フラットシューズを履いているのですが、大の愛用品はアルゼンチンのブランドMARTINIANO(マルティニアーノ)の山羊革のフラットシューズ。

薄い一枚革でとにかく軽く、はき心地がとても柔らか。

足にフィットするので疲れず、持ち歩くときは平らになるので嵩張らないのです。

新幹線での移動や長時間のフライトでも快適。そして何より、美しい!

美しいフラットシューズ<br>アルゼンチンのマルティニアーノ

青山のセレクトショップ、SUPER A MARKETで3年前に最初に買ったのは白。あまりの履きやすさにヘビロテし、去年はラベンダーとシルバーゴールドを購入。そしてこのほどずっと手に入らなかった定番の黒がやっと入荷して、全部で4足になりました。

どれも大事に手入れして、まだまだ長く履く予定。

シーズンごとに綺麗な色の新作が入荷するので心動かされますが、ムカデじゃないからそんなにたくさんいっぺんに履けないしね。

 

以前は棚にずらりと靴を並べて喜んでいたのですが、東京で一人暮らしをするようになってからは本当に気に入ったもの以外はオークションに出すなどして処分してしまいました。

 

気に入った色を、ゆっくり、少しずつ。

今シーズンヘビロテしたシルバーゴールドは少し擦れてきたので、青山のUNION WORKSに持って行って補色の相談をしようかな。

行きつけの修理屋さんを持つのも、靴と長く付き合うコツかもしれません。

 

生まれたときには私の人差し指ぐらいしかなかった息子たちの足ももう、28センチと25センチ。もうすぐ私が我が家で一番の小足となります(25センチだけど)。

幼い頃、パッと手を振り払って駆け出してしまうのを追いかけて抱きとめた柔らかな彼らの身体は、私の追いつけない速さでどんどん手の届かないところへ行ってしまう。それがとても嬉しいのです。

 

もう若さゆえに気負うこともなく、育児に追われることもなく、気に入った靴で一人で歩く秋の街は、寂しいけれども美しい。

これからはこの寂しさと仲良く手を携えて、生きていけるようになりたいです。

美しいフラットシューズ<br>アルゼンチンのマルティニアーノ

AbemaPrimeのスタジオにて。シャツはHYKE

 


美しいフラットシューズ<br>アルゼンチンのマルティニアーノ

Article By Keiko Kojima

小島慶子(タレント、エッセイスト)
仕事のある日本と、家族と暮らすオーストラリアのパースを毎月往復する出稼ぎ生活。 『るるらいらい~日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)、『解縛(げばく)』(新潮社)、小説『わたしの神様』(幻冬舎)、小説『ホライズン』(文藝春秋)、新刊に『幸せな結婚』(新潮社)がある。

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