夜中の爆買い 小島慶子

毎日zoomで仕事をしているうちに、季節が変わってしまいました。

夏服は、部屋の隅に置いた大きなスーツケースの中。明日こそ衣替えをしようと思いながら、早くも雨の季節に。

クローゼットの中はまるきり冬服で、なけなしの春物のニットとスエットでごまかしてきたけど、もう限界だ・・・と腰を上げかけたときに、うっかりオンラインショップのアプリをタップしてしまいました。

衣替えの前に服を買ってはいけない!絶対!なぜって、大抵は既に持っているのと似たようなものを買ってしまうから。

好みって、そんなに簡単に変わらないんですよね。

そしてなんでもすぐに上書きされてしまう私の脳みそは、半年もすれば自分が何を持っていたかを忘れてしまう。

白紙の状態で欲しいものをカートに入れてみたら(入れるだけ)、いま自分がものすごくピンクを着たがっていることが判明しました。

巣篭もり期間中に消費マインドはすっかり冷え込み、物欲はほとんどない。

けど、ピンクの服を見るとぱあっと気持ちが華やいで、なんかいいことがある気がして、口の中には甘い味が広がって、ついカートへ。

いや入れるだけ入れるだけ。

心理テストみたいなものだから。まあ私はあれだな、いま明るさとかハッピーな感情に飢えているのね。

ふむふむ。暗いニュースが多いしな。

それにしても習慣とは恐ろしいもので、ここ2ヶ月ほどオンラインでばかり仕事をしていたので、カートに入れたのは全てトップスでした。

下半身は着ないの?と思わず自問したほど。映るのは上半身前面だけですものね・・・。

ピンクのコットンのブラウス。ピンクのTシャツ。白地に苺のTシャツ。か、可愛い・・・忘れていた物欲が蘇る兆し。

しかしこういうのは、夜中に買ってはいけません。昼間見ると、なんでこんな服?なんて思うもんです。

で、朝になったらすっかり忘れて、その日の夜中。明日こそ衣替え・・・と腰を上げたところでまた、うっかりオンラインショップをタップしてしまいました。

新たにカートに入れたのは、ピンクの麻のシャツ。白いブラウス。そして、テロンテロンのヨガパンツ。

いやこんな、全部で6点なんて買いすぎ。

単価が安いからって油断禁物。スマホを放り投げて正気に戻りました。

そして・・・また翌日の夜中。

もうお分かりでしょう。買ったんです。

信じられない、まさかそんなこと。でも買ったんです。

どれもプチプラだし、すごく安くなっているのもあった。

確かにピンクのトップスは持ってない。だけど一度に買いすぎだろ。

決済の瞬間、安い服をたくさん買うぐらいなら、同じ値段でいいものを一枚・・という鉄則が頭をよぎりました。

そのとき耳元で「気兼ねなく毎日洗えるトップスでzoomを楽しく♪」と囁く妖精の声が聞こえ、最後のタップを決めたのでした。

届いた服を並べると、どう考えても買いすぎでした。

衣替えする前に服を買ってはいけない・・・わかっていたはずなのに。なのに、なのにこんなに嬉しいなんて!!うああ、罪悪感と喜びで引き裂かれそうだ。

夜中の爆買い 小島慶子
左から綿ブラウス、麻ブラウス、インド綿ブラウス、綿Tシャツ、胸に苺の刺繍入り綿Tシャツ、履き心地最高のヨガパンツ

どうすればこの、うれ苦しい感情から自由になれるでしょうか。

そこで、衣替えをやめることにしました。

しばらくはこの買った服だけで回す。

下半身はヨガパンツでいいから。減価償却です。

もしかしたらもしかして、これで一夏乗り切れてしまうかも!

夜中の爆買い 小島慶子
新しい麻のブラウスでzoomに臨む。3ヶ月サロンに行っていない髪がそろそろ手に負えなくなりつつあります。


今再びのダイアモンド<br>小島慶子

Article By Keiko Kojima

小島慶子(タレント、エッセイスト)
仕事のある日本と、家族と暮らすオーストラリアのパースを毎月往復する出稼ぎ生活。 『るるらいらい~日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)、『解縛(げばく)』(新潮社)、小説『わたしの神様』(幻冬舎)、小説『ホライズン』(文藝春秋)、新刊に『幸せな結婚』(新潮社)がある

小島慶子  
タレント、エッセイスト
仕事のある日本と、家族と暮らすオーストラリアのパースを毎月往復する出稼ぎ生活。 『るるらいらい~日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)、『解縛(げばく)』(新潮社)、小説『わたしの神様』(幻冬舎)、小説『ホライズン』(文藝春秋)、新刊に『幸せな結婚』(新潮社)がある。