
今再びのダイアモンド
小島慶子
前回、心の姉の話を書いたらとても反応が多くて驚きました。
そうか、私と同じような気持ちでいる人も多いのね!
そしてなんと、私を心の姉認定していると告白してくれた友人が何人かいたのです。
こんな私でもそんな風に慕ってくれるなんて、めちゃくちゃ幸せだなあ・・・としみじみ嬉しい。
心の姉は「あったかもしれない自分の投影」だって書いたけど、そもそも友達ってそういう存在ですよね。
男女にかかわらず、親しい友人は皆、ああ、私はこんな人になりたかったと思うような、憧れ要素のある人ばかりです。
友情で一番大事なのはリスペクト。それは夫婦も家族も同じでしょう。
友人と夫婦と親子で、リスペクトを維持するのが一番難しいのは夫婦のような気がします。
距離が近すぎて、互いに見たくなかったところまで見てしまうから。
子育てをすると特にそうですね。
以前、ある人生の先輩(私の心のグレート姉)とそんな話をしていたら、彼女は「私はパートナーに期待してないから、別に好きじゃなくても、いまさら離婚しようとは思わない」と乾いた声で言いました。
聞けば確かに異性としての感情はすっかり冷めた感じではあるのですが、大好きな芸術の話はできるのだと。
でも一緒に舞台や映画を見ようとは思わない。
経済的にも完全に別会計でそれぞれ自立しているのでさっぱりしている。
パートナーが熱中している趣味は彼女から見たら意味不明なのだけど、わー変なのと思うだけで腹も立たないのだとか。
当時、夫婦の関係が変化の時を迎えて、悩み深い日々を送っていた私にとっては、グレート姉のこの言葉は一筋の光明でした。
そうか、期待するから苦しいんだ!
相手に期待をしないって、一見冷たいようだけど、実は本当の自立の証なのかも。
自分を受け入れて欲しいとか、相手を誰よりも分かりたいとかいう重み付けをすることは、自分の世界を相手によって豊かにしようとする欲求の表れだもの。
私はずっと、夫がいなければ幸せになれないと思っていました。
でも40代も半ばに差し掛かる頃にふと、彼に出会わなかったとしても私は自分を幸せにすることができただろうな、って思えたのです。
ああ、愛が冷めたんだわとその時は思いました。
本当にそうかしら?
夫は長い間、私の信仰の対象でした。
夫を信じていれば幸せになれると思い込んでいたんです。
でも、それってあんまり健全じゃない。
自分で幸せになれる力のある人間同士が関係を結ぶ方が心地いい。
こうして霧が晴れたように夫が信仰の対象ではなくなったのは、私がようやく成熟して、自分を幸せにする自信がついたからなのでは?
そうして、私は夫離れをしました。子離れならぬ、夫離れです。
不思議なもので、気の持ちようが変わっただけで、ちょっと楽になれるもの。
それまで夫に対して歯がゆく思っていたことも乾いた諦めへと変わり、そんなことで私の人生をつまらないものにしてはならぬと思うようになりました。
今は一緒に子育てをする最高の仲間ですが、このミッションが終わったら、彼は彼を、私は私を幸せにすることに集中できるようになるでしょう。
その時一緒にいるかどうかはわからないねと、時々二人で話します。
なんだか明るくて切ない感じ。でも、執着から自由になるって心地いい。
そんな折、アクセサリーの棚から夫が婚約の時に作ってくれたダイアモンドのピアスとペンダントが出てきました。
もう15年以上もつけていなかったけど、久々につけたらいい感じです。
昔よりも、似合うかも。
20年前に夫から贈られた婚約ペンダントとピアス。一緒にお店に行ってデザインしてもらいました。
以前は苦い思いが湧き上がったのに、なんだか新鮮な気持ちでつけることができたのです。
これが、期待しないってことなのかな。
今ある形を認めて、それ以上でも以下でもない評価をすることができるようになったってことなのだろうか・・・。
約束の証だった小さなダイヤモンドは、約束から自由になった今、これまでのいつよりもよく似合う。
テレビ電話越しにつけて見せると、8000キロ彼方の彼も「いいね」と笑ったのでした。
珍しく衣装で赤を着ました。濁りがなくてとてもきれいな赤!気持ちも明るくなります。ENFOLD です^_^
こちらは白のオールインワン。シルバーのラインがとても素敵。
トップス&オールインワン
ブルネロクチネリ#brunellocucinelli
イヤカフ&バングル
ブシュロン #boucheron
Article By Keiko Kojima
小島慶子(タレント、エッセイスト)
仕事のある日本と、家族と暮らすオーストラリアのパースを毎月往復する出稼ぎ生活。 『るるらいらい~日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)、『解縛(げばく)』(新潮社)、小説『わたしの神様』(幻冬舎)、小説『ホライズン』(文藝春秋)、新刊に『幸せな結婚』(新潮社)がある